不登校とゲーム制限条例について|弊社見解
- 雨宮 英介|AMEMIYA, Eisuke
- 2020年1月16日
- 読了時間: 2分
某地方自治体が、不登校への対策の一環としてゲームを制限する条例を制定する動きがある、との報道がありました。この動きに対する弊社の見解を表明いたします。
「不登校」と「ゲームに従事すること」とが全く無関係とは断言できませんが、同様に、「ゲームを制限する」ことが「不登校という現象に肯定的な影響をもたらす」とも断言できません。
この議論については、あまりにも不明瞭で漠然とした事象が二点含まれています。
1) 「不登校」という現象をどう定義するのかが論じられていない
2) これら自治体で論じられている「ゲーム」が、WHOのICDにおける「ゲーム依存」と同義なものなのか、自治体が独自に定義しているものなのかが明らかにされていない
以上、少なくとも二つの「あまりにも漠然としたこと」同士を突き合わせて論じている時点で、それは議論としては成立していません。「糠に釘」ところか「糠に木綿糸」という、どうにも歯がゆい感覚を覚えます。
「ゲームを制限すれば、不登校が解決する」という、あまりにも短絡的で因果関係が不明瞭な議論は、およそその自治体に戸籍を置いている住民の利益にはなり得ません。
弊社は、こうした根拠不明で効果も期待できないような条例案そのものに異議を唱えます。
仮に、これら自治体で論じられている「ゲーム」事項が、WHOの言う「ゲーム依存」を指しているのだとすれば、「依存行動そのものをやめさせる」対処自体が効果を持たないばかりか、却って依存行動を強化する危険性があります。その場合は、条例自体がその個人の人権を侵害するものになり、住民の幸福を保障するものとは、とても言えません。これについては、ハームリダクションに関する各所見解をご参照ください。
「ゲームを長時間プレイすること」や、不登校;厳密に言えば「適応困難」は、表面的現象でしかなく、表面的事象を介入の対象と定めることは、勉強不足で軽薄な対応です。これは、自治体全体の行動化(アクティングアウト)であり、そちらの方が問題行動として問題視されるべきものです。
[弊社は個人の健康を推し進める基本的姿勢を持ちますので、自治体の病理を住民個人に擦り付けて個人の健康を剥奪するような問題行動に対し、強く異義を唱えます。

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