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経営理念

株式会社は経済原理に基づいており、

一方、心理臨床は「利他主義」という明確な哲学に基づいて実践されるべきものです。

この二者が質的な衝突や葛藤を起こしやすいことは、

私自身の葛藤でもあり、常に疑問を感じさせるものです。

社会経験が未熟だったころ、私はこの質的葛藤に気付くことができず、

自分自身の体調も崩してしまいました。

また心理臨床実践においても、

過剰な経済原理が心理臨床の哲学を

覆い隠そうとすることがしばしばあります。

同業者の中には経済原理に呑み込まれて

哲学を失っている者も大勢います。

「不況」という状況の中で、自然と哲学を放棄する方向へ向かうのは、

仕方のないことなのかもしれません。

 

私は、哲学を放棄するのであれば

この仕事に携わることそのものを放棄した方が良いと考え、

廃業を考えたこともあります。

「不況が英語では"depression"であり

『抑うつ』と同じ言葉が用いられている」ことを

私の治療者であった賀陽濟先生から教わり、

不況と業界に起こること・自分の身に起こっていたことが

連動していることを理解したのでした。

 

賀陽先生に私の中にある葛藤を指摘いただいて、

私自身が経済原理に過剰適応していたところから、

少しずつ脱出することができたのです。

賀陽先生は、今でも私の中で大切な治療者です。

幸いなことに、

私が育った環境には経済原理を希求する空気はなく、

金銭にまつわる病理に巻き込まれることはありませんでした。

その原点は今でも

重要な自分の一部分として守りたい側面です。

株式会社を設立するということは、

経済原理に自ら身を投じるようなものなのですが、

その一義性も私には疑問です。

本当にそうなのでしょうか?

程よい利潤追求と、心理臨床哲学は両立し得ないのでしょうか?

日本の社会構造の中にはさまざまな法人が生きています。

法人格の種の間に分厚い障壁が厳然として立ちはだかっていることも、

私には疑問です。

もっとシームレスで良いのではないでしょうか?

そのような質的疑問を携えつつ、株式会社の設立を決断しました。

 

最も大きな理由は「個人事業主」の業態を残しつつ

一人でも法人格を名乗れることです。

当面利潤追求をすることは難しそうなのですが、

時にNPOのようでもあり、

時に個人事業主のようでもあり、

そういう身軽な動きができる法人でありたいと考えています。

「心理療法」や「カウンセリング」は、

まだ日本では馴染みの薄いものです。

弊社は「ひとまず、お気軽にカウンセリングにいらしてみませんか?」と

敷居を低くし門戸を開いていることを

最も大切な理念に据えています。

弊社がどのような心理療法でもお引き受けできるわけではありませんが、

カウンセリングを必要としている人が心理療法の戸口に立ったとき、

「ここなら入っても大丈夫そうかな」と

思っていただける場を保障したいと考えています。

​また「必要な時にいつでもカウンセリングを受けられる」こと、

「できるだけカウンセリングを継続できる」ことも、

弊社の重要な理念です。

カウンセリングを「目的なく」始めることなく、また

「これでおしまいにしましょう」と形式的に終了することもなく、

「かかりつけ」的存在として、

必要としている方の時間の流れの傍にいつもいるような、

そうした存在でありたいと考えています。

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